風が涼しくなってきた。
「…………」
空は広くていい。
ごちゃごちゃしてなくていい。
やっぱり、屋上はいいところ。
ひとがいない。
……誰もいない。
「…………」
この空のどこかを、今飛んでる?
私はまだ屋上から見上げることしかできないね。
「ちょっとッ! 彩峰さん!」
……委員長。見つかった。
「ここでなにをしてるの? みんな準備で忙しいのよ!?」
文化祭の準備くらい、いいじゃん。
ひとがいっぱいの場所は、イヤ。
「黙ってないで何とか言いなさいよッ! もう、ただでさえ実行委員ひとりで
やってるようなものなのに……これ以上手間を増やさないで!」
「…………」
……巣立ったのは、小さなおまえだけ。
このままはいけないのかな?
いつか広い空に、飛び出していかないと……。
どこまでも続いてるね。
この空で繋がってるんだ。
透き通って綺麗な青空。
でも、今はもう、ここから見てるだけでいい……。
それだけでいい……。
「だいたい、あなたがやりたがったんじゃないのヤキソバ係! 言ったからには責任持ちなさいよ」
「……だから、『月刊ヤキソバ』を見てる」
「はあ?」
ありふれた素材が生み出す、究極の贅沢。
年に1度の白秋祭……今年からヤキソバ祭り。
……うん…………悪くないね。
ヤキソバ最高。
ヤキソバパン、究極、至高の世界。