「そういや、こいつ、名前は？」
「トリ」
「それは名前じゃねえって」
名前ね……名前か。なるほど。それいいね。
「名前決まった」
「ほう」
「トリ」
「ふざけてんだろ」
「……覚えやすい。忘れない」
「わかりにくいだろ！ それに付けた名前なんて忘れねぇよ」
それは考えが甘いね。
世の中、何があるかわからない。
先のことなんて、誰にもわからない。
……だから、おまえもちゃんと自分でがんばるんだよ。
親鳥がいなくても、自分ひとりで飛んでみせないと。
…………たとえ、誰に裏切られてもね……。
ひとりでもね……。
強くなりな。
「トリ……エサ……お食べ」
「なんで片言なんだよ」
「白銀……エサ……食え」
「エサって言うな！」
「なら、あげない。……ほら、お食べ」
……ピィピィ…………。
――――パクッ
「お、おい、うそだろ……ヤキソバなんて……食っていいのか？」
「勝った」
「なら、オレが負けたのか？」
「だって、食べた」
「今ならきっと何でも食うんだ。食い物を知らないからな」
「お食べ」
……ピィピィ…………。
――――パクッ
「惨めだね」
「…………それはオレに言ったのか？」
「……まさか」
「その微妙な反応はなんだ」
「……白銀に言った」
「少しは言葉に遠慮しろ！ オレをなんだと思ってやがるんだ」
「……ふっ」
「その笑い方もやめろ」
「全部だめ…………我が侭なんだから」
「君ね……」
……ピィピィ…………。
「はい、お食べ」
――――パクッ
「……しかし、良く食うな、こいつ」
「ヤキソバは総合健康バランス食」
「はいはい……いいから、オレにもやらせてくれよ」
「……いいよ」
「ほーら、食え」
――――ぷいっ
「……あれ？ おかしいな……ほーら、エサだぞ？」
――――ぷいっ
「……なんか、もう腹一杯みたいだな」
……ピィピィ…………。
「はい、お食べ」
――――パクッ
「なんだ、食うじゃん……ほら、くえ」
――――ぷいっ
「…………ほら」
――――ぷいっ
「…………食えーッ！」
――――ぎーぎーぎーッ！
「……きさま」
「動物は心の濁った人間を見分ける」
「ぐぐぐ……決めたッ！！ おまえの名前は『スミカ』だっ！ その汚名を一生引きずるがいい！」
「はい、お食べ」
……ピィピィ…………。
――――パクッ
「無視するなぁぁ！」
